その夜、ラブアンを開いた理由
19歳枠を、私は普段あまり開きません。
理由は単純で、年齢差が24歳あると、話題が合わない確率が高いからです。流行のドラマも、聴く音楽も、行ったことのある店も、ほとんど噛み合わない。
それに、19歳の女性のパパ活の動機は、おおむね「目の前のお金」です。長期的な関係に発展しにくい。3年やっているとそのパターンが見えてくるので、自然と20代以上を見るようになります。
その日は、火曜の23時頃でした。
特に意図があったわけではなく、検索条件を変えてみようと思って、年齢の下限を一度18にしてみました。気分転換のつもりだったと思います。
彼女のプロフィールは、上から3人目にありました。
写真は1枚だけ。窓際で本を読んでいる横顔。たぶんカフェで、誰かに撮ってもらったか、自撮りで。
自己紹介は、本当に短かったです。
東京に出てきて半年です。落ち着いた方とお話したいです。
これだけ。
普段の私なら、200字未満のプロフィール文は切ります。
なぜその夜、私が彼女に「いいね」を送ったのか、自分でもよくわかりません。
ただ、「落ち着いた方」という言葉と、本を読んでいる横顔の写真と、その2つの組み合わせに、何か気になるものがあったのだと思います。
「お仕事、何系を?」
マッチが成立したのは、翌日の昼休みでした。
私は通常通り、その日の夜にメッセージを送りました。
プロフィール拝見しました。「東京に出てきて半年」と書かれていたのが印象に残りました。 差し支えなければ、お仕事は何系をされていますか?
返信が来たのは、その日の23時過ぎでした。
アパレル系です。
それだけ。
普段なら、この時点で私は切ります。会話が続く気配がないからです。
ただ、その夜は何となく、もう一通だけ送ってみました。
渋谷あたりですか?私は丸の内に勤めているので、お仕事終わりに渋谷あたりでお会いできれば嬉しいです。
返信は翌日の昼でした。
渋谷です。20時に上がれる日が多いです。
少しずつですが、文章が長くなっていく。
3往復したところで、私から食事に誘いました。場所は恵比寿のビストロ。
条件のすり合わせを切り出した時、彼女からこう返ってきました。
あの、お店、もう少しカジュアルなところで大丈夫です。あと、お気持ちも、最初は少なめで大丈夫です。
これを読んだ時、私はしばらく返信ができませんでした。
「彼女のほうが、私の財布を心配している」
そう気づいたからです。
普段、パパ活女性から「気を遣わなくていい」というメッセージは、ほぼ来ません。彼女たちはお金が目的でアプリにいるので、当然です。
私はこう返しました。
お気遣いありがとうございます。お店は私に選ばせてください。お気持ちは、お会いしてから決めましょう。
このやり取りで、私の中で何かが少し動きました。
「この子は、たぶん、こちらが思っているよりずっと大人だ」
渋谷で待っていた女の子
待ち合わせは20時、道玄坂にしました。
渋谷ハチ公前は人が多すぎて、初対面では合流しにくい。少し坂を上ったところなら、静かで、わかりやすい。
私は10分前に着いて、彼女は20時きっかりに到着しました。
グレーのトレーナーに、色落ちしたジーンズ。薄手のジャケット。スニーカーは白。バッグは小さめのキャンバス地。
化粧はほとんどしていない、と最初は思いました。よく見ると、最低限の整え方をしているとわかりました。
派手さは、何ひとつありませんでした。
ただ、立っている姿勢が真っ直ぐで、それが妙に印象に残りました。
「マルPさんですか」
声は小さめでした。けれど、私の顔を正面から見て、ちゃんと挨拶をする。
「お忙しいところ、ありがとうございます」と続けました。
19歳が初対面の年上男性に「お忙しいところ」と言える。これは、群馬の家庭できちんとした教育を受けてきた人だな、と思いました。
恵比寿までタクシーで10分くらいでした。
車内、彼女はほとんど話しませんでした。窓の外を見ている。私も無理に話を振らずに、流れる恵比寿の夜の街並みを一緒に見ていました。
沈黙が気まずくないのは、いい兆候です。
「私みたいなのが、こんなお店に来ていいんですかね」
予約していたのは、恵比寿の路地裏にある小さなビストロ。席数は12席、シェフ一人で回している店です。
「お洒落すぎず、けれどちゃんとした店」という、私の中での19歳〜20代前半の女性向けの定番です。
彼女がメニューを開いて、5秒ほどフリーズしました。
「あの、私、お酒はちょっと、控えてるんです」
「あ、こちらこそ気がつかなくてすみません」と返しました。
「私はワインを一杯だけ頂きます。あなたは何か飲み物を?」
「じゃあ、ジンジャエールで、お願いします」
ソムリエに、料理に合うワインを一杯だけお任せで頼みました。
オーダーが済んで、お通しのオリーブが出てきたあたりで、彼女がぽつりと言いました。
「私みたいなのが、こんなお店に来ていいんですかね」
下を向いて、グラスの脚を指でつまみながら。
私は少し考えてから、こう返しました。
「来たいなら来てください。それが大人です」
彼女が顔を上げて、私を見ました。少しだけ、表情が動いた気がしました。
「大人、ですか」
「19歳でも、自分で決めて来たなら大人です。年齢じゃないと、私は思っています」
それから少しずつ、彼女が話し始めました。
群馬の前橋出身。地元の普通科の高校を卒業して、進学はせず。家には母と、再婚した父と、弟がいる。家を出たい一心で、上京した。理由は色々あるけれど、特別な話じゃない、と。
私は深く聞きませんでした。聞いたら、たぶん彼女が話したくないところに踏み込むことになる。
「アパレルは、好きで選んだんですか」
「服は好きで。でも、入ってみたら接客がメインで、思ってたのと違いました」
「給料は?」
「18万円くらいです」
「家賃は?」
「8万円です」
「ギリギリですね」
「ギリギリです」
このやり取りの間、彼女は嘘をつかない。
私は43年生きてきて、嘘をつかない人を見るとすぐにわかります。話の細かいところで、辻褄を合わせようとする努力が無い人は、嘘をついていません。
「パパ活、長くやってるんですか」
「3ヶ月です。3人くらい会いましたが、続いた方はいません」
「なぜ続かなかったと思いますか?」
少し考えてから、彼女は言いました。
「私が、たぶん、面白くないからです」
「そんなことないと思いますが」
「いえ、私、本当に話下手で。皆さんに、たぶん、つまらなかったんだと思います」
私は何も返しませんでした。ここで否定の言葉を重ねても、彼女には届かないだろうと感じたからです。
代わりに、私のグラスを、彼女のジンジャエールのほうに少し傾けて、「乾杯、もう一度しませんか」と提案しました。
「何に乾杯ですか」
「19歳の、東京での半年に」
彼女が小さく笑いました。今夜、初めての笑顔でした。
時間が経つにつれて、彼女が少しずつほどけていきました。
途中、彼女がジャケットを脱ぎました。トレーナーの袖から出ている細い腕に、私は一瞬、目をやってしまいました。
鎖骨が、トレーナーの首元から少しだけ覗いていました。
「自分の娘がいたら、このくらいの年か」
そう考えてしまった瞬間に、私は手元のワインを一口、飲みました。
「もう少しいさせてもらえませんか」
会計を済ませて、店を出ました。
恵比寿の駅までゆっくり歩く間、彼女はよく喋るようになっていました。お店の話、入荷したばかりの春物のコートの話、最近読んだ本の話。
「中央線で帰れますね」と私が言いました。
「はい」
タクシーを止めようとした時、彼女が立ち止まりました。
それから、少し下を向いたまま、小さい声で言いました。
「あの、もう少し、いさせてもらえませんか」
「もう少し、と言うと」
「もし良ければ、ホテルに、行きませんか」
予想していませんでした。
今夜は食事だけで終わると、私は最初から思っていました。彼女が「最初は少なめで大丈夫です」と書いてきた時から、初回は顔合わせだけのつもりだったのです。
少しの沈黙がありました。
私は、彼女の目を見ました。彼女は私を見ませんでした。靴の先を見ていました。
「行きましょうか」
そう返した自分の声が、普段より少しだけ低かったのを、覚えています。
渋谷の夜
ホテルまで歩いて、7〜8分。
部屋に入って、彼女はコートを脱ぎ、ベッドの端に静かに座りました。両手を膝の上に重ねて、目を伏せている。
その姿が、何かの儀式の最中のように見えました。
「シャワー、先に浴びましょうか」
「はい」
短い返事の中に、緊張が滲んでいました。
シャワーから出てきた彼女は、髪が少し濡れていました。バスローブの襟元から、細い首と、その下の鎖骨が見えていました。
ベッドに彼女を横たえる。
明かりは一段落として、渋谷の夜のネオンの残光だけが、カーテン越しにうっすらと部屋の中に流れていました。
唇を重ねる。
彼女の唇は、震えていませんでした。けれど、開きもしませんでした。
私は急ぎませんでした。
何度か触れるだけのキスを繰り返して、彼女のほうから少しずつ開いてくるのを待ちました。
舌が触れた時、彼女は声を出しませんでした。ただ、小さく息を呑んで、それから細く長く息を吐きました。
「大丈夫ですか」
「大丈夫です」
「無理してませんか」
「してないです」
その答えが本当かどうか、私にはわかりませんでした。ただ、彼女の指が、私の腕をそっと掴んだので、私は続けることにしました。
バスローブを開きました。
彼女の体は、想像していたよりも細かった。鎖骨が浮いていて、腰骨も浮いていて、腕の内側の血管が薄く透けて見えていました。
「ちゃんと食べてますか」
そう聞きそうになって、私は黙りました。今、その質問は、たぶんしてはいけない質問でした。
肌に触れると、彼女が小さく息を吐きました。
それから、長い長い息を吐きました。何かを我慢している、というより、何かを受け入れている、そんな息でした。
触れる場所が変わるたびに、彼女の体は少しずつ反応しました。けれど、声はほとんど出しませんでした。息だけ。短く吸って、長く吐く息。
「声、出しても大丈夫ですよ」と私は小さく言いました。
「あんまり、声、出すの、慣れてなくて」
そう返ってきました。
「無理しなくていいですよ」
彼女が、目だけで小さくうなずきました。
しばらくしてから、彼女の唇から「ん」という小さな音が漏れるようになりました。それは声ではなく、息の途中に混じる小さな振動のようなものでした。
うなじに唇を当てると、彼女の体が一瞬だけ硬くなって、それからほどけました。耳の裏側のあたりが、薄く赤くなっていました。
肩から胸元、それから腰のあたりへと、ゆっくり手を移していきました。
彼女は自分から動きませんでした。私の動きに、ただ静かに応えるだけでした。
体の位置を変える時、私が彼女の体を導きました。彼女は導かれるままに、けれど嫌がる素振りはなく、その細い体を私に預けてきました。
途中、彼女が両手で私の背中に手を回しました。
強くはありませんでした。けれど、しがみつくような、何かを離さないような、そういう手の力でした。
その手の力に、私は少しだけ動揺しました。
「この子は、ただお金のためにここにいるんじゃない」
そう思ってしまったからです。
パパ活の現場で、相手の感情を勝手に読むのは禁物です。それは私が3年かけて学んできたルールでした。
けれどその夜、彼女の背中に回された両手の力が、私の中のそのルールを少しだけ揺らしました。
そこから先のことは、書きません。
ただ、その夜、彼女はずっと声を抑え続けていました。
声を出すことを、自分に許していないようでした。
体は何度か震えました。震えるたびに、彼女は私の背中の手に少しだけ力を入れて、それから、また抜きました。
最後には、彼女は私の胸の中に、小さく丸まりました。
長い時間、二人とも何も言いませんでした。彼女の呼吸が、私の鎖骨のあたりに当たっていました。少しずつ、その呼吸がゆっくりになっていきました。
時計を見たら、3時前でした。
彼女の濡れた髪が、私の胸の上で、街灯の薄い光に少しだけ光っていました。
朝、サイドテーブルにお気持ちを置いて
7時に、自然に目が覚めました。
カーテンの隙間から、渋谷の朝の光が、細い線になって床に落ちていました。
彼女はまだ眠っていました。
横向きで、両手を顔の前で組んで、膝を少しだけ曲げて。子供のような姿勢で。
私はしばらく、そのまま彼女の顔を見ていました。
寝ている彼女の顔は、昨夜よりさらに幼く見えました。19歳という年齢が、これほど若く感じられるものか、と思いました。
「自分は、何をしているんだろう」
一瞬、そう思いました。
その思いを、私は呑み込みました。呑み込んで、ベッドから静かに起き上がり、先にシャワーを浴びました。
身支度を整えてから、サイドテーブルに封筒を置きました。お気持ちと、メモを一枚。
おはようございます。 お気持ちと、家までのタクシー代を入れておきました。 またご飯、行きましょう。
マルP
最後の一行は、少し迷って、それでも書きました。
それから、ベッドの横にもう一度座って、彼女の肩をそっと2回叩きました。
「8時前です。そろそろ出ましょうか」
彼女は目を開けて、一瞬どこにいるのかわからない顔をしました。それから私を認めて、「はい、すぐ起きます」と小さく返しました。
「サイドテーブルに封筒を置いておきました。あとで確認してください」
「ありがとうございます」
彼女がシャワーを浴びている間、私は窓のカーテンを少しだけ開けて、目覚め始めた渋谷の朝の街を眺めていました。
二人でホテルを出て、渋谷駅のタクシー乗り場まで歩きました。
先のタクシーに、彼女を乗せました。
ドアが閉まる前に、彼女が小さく頭を下げました。
「昨日は、本当にありがとうございました」
「こちらこそ。気をつけて」
ドアが閉まって、車が動き出すまで、彼女はずっと窓の外の私を見ていました。
それから私は踵を返し、電車で自宅へと向かいました。
道中、私はずっと「もう会わない方がいいかもしれない」と考えていました。
19歳の女の子に、私は何かを与えられるだろうか。
たぶん、お金以外は、何も与えられない。
それなのに、彼女のあの背中に回された手の力を、私はまた感じたくなるだろう。
そう知っている自分が、少し怖くなりました。
ホームで電車を待っているとき時、メッセージが送られてきました。
昨夜は、本当にありがとうございました。タクシー代まで頂いてしまって、すみません。 お気持ちもメモも、しっかり頂きました。 またご飯、ご一緒できたら嬉しいです。
私はそのメッセージをしばらく見つめていました。
返信は、家に着いてからにしようと決めました。
今回の顔合わせから考えたこと
今回は「学んだこと」ではなく、「考えたこと」を書きます。
学びには答えがあります。考えには、答えがありません。
1. 年齢差は、書類上の数字以上に重い
24歳差。私が結婚して娘ができていてもおかしくない年齢差です。
それを冷静に受け止めて、それでもこの関係を選ぶ自分がいる。これは美徳ではないけれど、嘘でもありません。
19歳の女性と会う時に、「年齢差は関係ない」と自分に言い聞かせる男性は、たぶんどこかで嘘をついています。
正直に「重い」と認めた上で、それでも会うかどうかを決める。それが、43歳の私が辿り着いた、ひとつの結論です。
2. 19歳の経済不安は、想像より重い
月給18万、家賃8万、東京で一人暮らし。
数字を聞いただけなら「ギリギリですね」で済みますが、実際の彼女たちは、そのギリギリの中で毎日を生きています。
そして、その「ギリギリ」を埋める手段として、パパ活を選ぶ。
これは、私たち男性側の「パパ活」とは、たぶん意味が違います。
私たちにとってのパパ活は、余剰の時間とお金を使った娯楽です。彼女たちにとってのパパ活は、生活の一部です。
この非対称性を、私はもう少し意識して向き合うべきだと、今回考えました。
3. 動揺する自分を、否定しないでおく
3年やっていて、今回初めて「自分は何をしているのか」と思いました。
これを否定しないでおこうと思います。
動揺するのは、自分がまだ人間でいる証拠だと、私は思います。
パパ活を「効率」「数字」「ノウハウ」だけで語れるようになってしまったら、それはたぶん、私が何かを失った時です。
動揺する自分を、ちゃんと記録しておきたい。
それが、今回の体験談を書いた理由です。
今回使ったアプリ「ラブアン」について
私が3年使っているラブアン。
今回のような「19歳〜20歳前後の、まだパパ活に慣れていない女性」と出会うには、ラブアンは現時点で一番自然な入口だと感じています。
ただし、19歳枠を開く時には、いくつか留意点があります。
- 相手の状況を想像する力が必要になる:年齢が下に行くほど、経済的・精神的な余裕が少ない可能性が高いです
- 「お金以外」で何を返せるかを考える:これは綺麗事ではなく、自分が長く続けるための話です
- 無理をさせない:相手のペースを尊重する。これができない男性は、19歳枠は開かない方がいいです
逆に、こんな人にラブアンの19歳枠は向きません。
- 数で勝負したい人 → 19歳枠は出会いの絶対数が少ない
- 感情を切り離せない人 → 私のように動揺します
- 即日大人を求める人 → 慣れていない子が多いので、初回は顔合わせのみが安全
今回のような、ある一晩を真剣に過ごしたい人には、ラブアンは静かに勧められるアプリです。
▶ [ラブアンの公式サイトを見る]
